Japanese | English

Kobe Studio Seminar for Design

ワークショップ: CGにおけるProduction Pipeline構築の諸問題へ向かって

前回の会合では,計算機科学での発想や理論的な側面が,(CGに限らず)多くの分野に見られることを確認しました。例えば,複雑になる仕様やユースケース,長期に渡る動作保証のための堅牢性の保証,そのための規格取得や学術的な裏付けの明示,学術的な意味での検証手段の策定など,があげられます。一方,CGにおいては,制作の様々な過程におけるメンテナンスのし易さと,アーティスティックな自由度(人為的に操作可能な自由度)とが,トレードオフの関係にあります。これらは,製作パイプラインやシステム設計の様々な箇所で,設計方針を左右する大きな要因となり,また,設計者側と利用者側の理解や意識に大きく依存することが課題であるということにも気づかされました。

本会合では,一度,その課題の焦点を理論的な側面に切り替え,純粋な理論的な立場からの議論を行いたいと思います。CGを主体に議論を行う会合ではありますが,本会合の論点の多くは,システム設計や開発側の知見としても重要と考え,有力と見込まれる幾つかの理論の入門的セッションを含む形で,議論をその目的として開催します。

本会合は数学者,計算機科学者,CG実践者(学術的な視点からの研究に携わる方),企業の研究開発に関わる方及びこれらの分野を学んでいる学生を中心に開催します。事前情報は随時,このページに追加して行く予定です。一般の方での参加希望者は,担当の世話人,長坂耕作までご連絡をお願いします。折り返し詳細な説明をご説明させて頂きたいと思います。

日時:
2014/09/06
会場:
開催場所: 神戸大学大学院人間発達環境学研究科(六甲台地区の鶴甲第2キャンパス)
部屋:
A739およびA721(会場では,eduroamが利用可能)
ワークショップ世話人:
高橋真 (Kobe University),長坂耕作 (Kobe University)
備考:

なお,本ワークショップは,セミナーシリーズ「Kobe Studio Seminar for Mathematics」と「Kobe Studio Seminar for Studies with Renderman」との共同開催です。

本ページ下部の参考文献もご覧ください。

プログラム

時間:
10:00-10:50
タイトル:
教育用パイプラインを伴った映像制作パイプラインについて
登壇者:
Yusuke Kiriu (Studio Phones)
概要:

我々の現在の映像制作では,規則に伴いhtmlを生成するごく単純な仕組みにより,映像制作パイプラインの様々なステージにおいて,様々な手段で,自己学習用教材や,ブレインストーミング用の資料などを提供する単純なシステムを運用しています。この講演では,我々の制作におけるスタッフ間のコミュニケーションコストの低減を計るための試験的な取り組みとして,プログラマブルな教育用パイプラインとして運用した際の,失敗談や成功例などに関して話します。

時間:
11:00-11:50
タイトル:
Pixar USDについて - 計算機代数の立場から -
登壇者:
Kosaku Nagasaka (Kobe University)
概要:

TBA

時間:
13:20-13:50
Discussion:
研究用パイプラインとしてみた,USDの可能性に関して
Moderator:
Yusuke Kiriu (Studio Phones) , Kazuhisa Takemoto (Honda R&D Co.,Ltd.)
概要:

日々変遷する技術の進展が激しい一方,実践的にも重要で,尚かつ研究としても発展出来る,そのような展開が可能かについて,世界では様々な意義深い展開が見られます。今回は,そのような展開がUSDを介することで可能なのかについて,まだリリースはされていませんが,研究用と実践用の両面から,午前の講演を振り返りたいと思います。

時間:
14:00-14:50, 15:00-15:50
タイトル:
プログラム検証とホーア論理
登壇者:
Makoto Takahashi (Kobe University)
概要:

プログラム検証の目的はあらかじめ定められた要求(仕様)をプログラムがみたしていることを証明することであり,ホーア論理はプログラムの正当性を公理と推論規則により導くための形式的体系です。本講演では,ホーア論理の概略を述べた上で,形式的体系としてのホーア論理の意味論とプログラム検証ツールを用いた検証方法について話をします。

時間:
16:10-17:00
タイトル:
モデル理論と確率的機械学習におけるVC次元
登壇者:
Kota Takeuchi (Tsukuba University)
概要:

機械学習の理論では与えられた部分集合(サンプル)から全体集合の様子を推測する方法を理論的に取り扱う。VC次元は集合族の複雑さの度合いを測る指標のひとつで,VapnikとChervonenkisらが1970年頃に導入した。VC理論の研究においては,VC次元が有限であることとPAC-学習可能性とが同値であることが示されている。同じころShelahはモデル理論の研究でVC次元と同様の概念を定義しSauer-Shelahの補題と呼ばれる命題を証明した。特に,モデル理論においてNIPという性質を満たす数学構造のクラスをVC次元の有限性によって特徴付けることができることに注目した研究が近年盛んになってきた。最近,Shelahによって2009年に導入されたn-NIPと呼ばれるクラスを研究することによってVC次元のひとつの一般化を得ることができた。この講演ではVC-次元の簡潔な導入を行い,その一般化が(とくに機械学習や確率論において)どのような意味を持ちうるのか議論したい。

参考文献:
時間:
17:20-17:50
Discussion:
パイプライン構築に関する未踏領域について
Moderator:
Makoto Takahashi (Kobe University), Kosaku Nagasaka (Kobe University)
概要:

パイプライン構築に関する実践的な話題と研究面の話題に,未踏領域があるのかについて議論したいと思います。例えば,パイプライン構築のソフトウェアやその機能が増えるなか,様々なユースケースで生じる共通した問題があるのか,その問題への対処に関する研究の可能性はあるのか,不適切に構築したパイプラインの維持負担とその負担を軽減する着眼点はあるか,恒久的あるいは普遍的なものを目指す方向で何が今後の課題なのか,などです。

参考文献

前もって目を通しておくと良いと考えられる参考文献を紹介します。パイプライン標準化などの検討や技術面でのサービスをアーティスト向けに提供していく仕組みを考えたり,パイプラインを構築していく意味などを考えていく際にも参考になると思います。

上記に加え,以下のサイトについても,参考になると思います。

今回の議論に必要な,ないしは関連する用語を理解するための基礎的文献集です。

プログラム検証とホーア論理に関する参考文献です。