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Kobe Studio Seminar for Studies

ワークショップ: データアーカイブやユースケースの多様化と,その中長期的な課題

近年,(研究・研究開発・生産・製造・制作など雑多な)資料などを含む様々なデータのアーカイブ化とその活用が高度化しています。それぞれの組織の背景に沿って個別の活用においての多様化が激しさを増す傾向にあります。利用目的も多様で,データ解析に始まり,新しい技術検討や確立のための研究開発推進・組織内のノウハウ醸成のための知識や技術の循環性獲得など,非常に多岐に渡って来ています。目的が異なれば組織によって必要となる技術も異なり,グラフ構造を持つデータベースの推進・自動化機構の推進など,近年の変化は計算技術との連携を見越した事後活用性の幅を広げています。そしてその根幹には,データ構造の規格化・抽象化など,組織間・研究分野間での広がりを見越した拡張性にあるのではないかと考えます。

本会合では,産学双方での様々な変化を特集し,データの取り扱いの多様化とその技術上の今後に関しての議論を進めます。加えて,扱い辛いため据え置きとなりがちな課題として,データ主体での取り組みとして進め辛い・扱い辛い事柄なども特集し,考えられるアプローチなどの意見交換も行って行きたいと思います。

日時:
2024/12/13 - 2024/12/14
場所:
A739
ワークショップ世話人:
安井雄一郎(日経イノベーション・ラボ),青木高明(滋賀大学),桐生裕介(スタジオフォンズ)

プログラム

時間:
2024/12/13 13:10-14:40
タイトル:
映像制作資料のアーカイブ化と,データの循環や組み換え
登壇者:
桐生裕介(スタジオフォンズ)
概要:

映像制作では,映像上の対象として様々な分野を自然と扱うこととなり,例えば,衣服・建築・料理・電化製品などそれらは多岐に渡ります。そのため,一定のまとまりをもった知識体系としてそれらを理解していくことは,世界観の形成や維持に繋がります。本セッションでは,「制作資料のアーカイブ化や萌芽的アイデアの管理」,「特徴抽出とデータのネットワークの展開」,「データ基盤上での事後活用による循環」を説明します。特には,(設定制作においての)データの組み換えなどを扱う上での数理的な展望にも触れて行きたいと思います。

時間:
2024/12/13 14:50-16:20
タイトル:
知識グラフによる情報の構造化とその利活用
登壇者:
安井雄一郎(日経イノベーション・ラボ)
概要:

知識グラフはグラフ構造により情報を柔軟に構造化するための手法である。知識グラフ上では事象はノードで事象間の関係はエッジで表現される。また各ノードやエッジにはラベルやタイプが付与される。知識グラフは一般的にグラフデータベースに格納され,クエリ言語による検索・抽出・集計が行われる。またグラフデータベースはRDF (Resource Description Framework) モデルとラベル付きグラフモデル (labeled property graph) に大分される。本講演では各モデルの特徴や利点などを整理し,状況に応じて適切に選択するための方針を議論する。加えて講演者が携わった書籍(下記備考)について一部紹介する。本書では知識グラフの構築に着目し,事例に踏まえた具体的なアプローチなどを紹介している。

備考:
  • はじめての知識グラフ構築ガイド. Jesús Barrasa, Jim Webber(著), 櫻井亮佑(翻訳), 安井雄一郎(監訳). マイナビ出版. 2024.
時間:
2024/12/13 16:30-18:00
タイトル:
時空間データの知識グラフの構築と共有
登壇者:
江上周作(産業技術総合研究所 人工知能研究センター)
概要:

様々な事物のデータ同士の関係性を表現する知識グラフ(ナレッジグラフ)は,異種システム間の相互運用性,情報検索,生成AI応用などに資するリソースとして注目されており,様々な領域において利用可能な知識グラフの構築と共有のニーズが高まっている。本講演では知識グラフを構築しWeb標準形式(RDF)で共有する方法について紹介する。特に,動的に変化する事象に関する知識を対象に,知識グラフとしてどのようにモデリングしWeb上で共有するか,またその応用事例について,時空間知識グラフやマルチモーダル知識グラフなどを例にアプローチを紹介する。

時間:
2024/12/14 10:30-12:00
タイトル:
モデルありきの世界とデータありきの世界
登壇者:
青木高明(滋賀大学)
概要:

データ駆動型アプローチ方法が多くの学問分野で広まっている。多様なデータが入手・集約されていく現代社会において,不可欠な研究手法となっている。一方で,理論研究・モデル研究に基づくアプローチ方向がある。本講演では,2つのアプローチの世界観を整理しつつ,両者のはざまに注目し,今後の研究の方向性を議論したい。

時間:
2024/12/14 12:00-13:30
Lunch Meeting:
過去会合で話題となったデータアーカイブ化の話題
モデレータ:
KSS世話人
概要:

過去会合での話題を振り返りつつ,ディスカッションを行います。キーワードとしては下記となります。

  • データの規格化と,事後活用で求められるデータの粒度
  • 異なる分野のデータの連携による活用性やその複雑さ
  • データ基盤内でのデータの循環を意識した取り組み
  • データの規格化・標準化そのものの難度の話題
時間:
2024/12/14 13:30-15:00
タイトル:
前近代日本史における研究データに関する基盤整備と分析
登壇者:
山田太造(東京大学史料編纂所)
概要:

前近代日本史史料を含む人文学研究資源のデジタル化(目録・デジタル画像・本文の生成)による研究データの蓄積と公開が急速に進んでいる。研究データを特定の分野のみならず関連する研究分野やその他の目的での利活用を促進するためには,研究データ管理,検索を含めたアクセス手段,および分類・分析手法の整備が不可欠である。これらの整備においては,研究データフローの確立も不可欠である。本報告では,これらの実践例として東京大学史料編纂所におけるユースケースについて述べる。

時間:
2024/12/14 15:10-15:40
ディスカッション:
データアーカイブの想定外利用の拡大
モデレータ:
安井雄一郎(日経イノベーション・ラボ),青木高明(滋賀大学),桐生裕介(スタジオフォンズ)
概要:

データアーカイブの構造化による事後的利用の拡大は,構築当初の想定を超えた利用の促進と受容を促すものへと繋がります。様々な研究分野の視点・着想・概念・技術などを意識し変革が進み得るため,データアーカイブを支える様々な技術の見直しや変革も継続し考える展開へと繋がります。本セッションでは,今後求められていくであろうデータアーカイブへのアプローチやその柔軟性に関して,本会合を振り返りつつ話し合いたいと思います。