CGにおける実践的な映像製作パイプラインの構築の際,様々な分野の研究面での発展を見据えた設計を模索していくことは,制作時の自由度を確保していく意味でも大変重要な視点と成り得ます。本会合では,純粋数学における幾何やトポロジーの研究者にお越し頂き,その研究面とCGに関する見解についてお話し頂きます。議論の時間には,映像制作ツールから見た発展性と,数学研究から見た映像制作ツールの可能性に関して議論したいと思います。本会合は数学者,計算機科学者,CG実践者(研究に携わる方)及びこれらの分野を学んでいる学生を中心に開催します。一般の方での参加希望者は,担当の世話人,長坂耕作までご連絡をお願いします。折り返し詳細な説明をご説明させて頂きたいと思います。
なお,本ワークショップは,セミナーシリーズ「Kobe Studio Seminar for Studies with Renderman」との共同開催です。
前もって目を通しておくと良いと考えられる参考書籍を紹介します。
講演に関連する論文またはサーベイペーパーについては,以下をご覧ください。
上記に加え,以下のサイトについても参考になると思います。
次の論文も参考になります(以下は,ワークショップ後に追加されたものです)。
この短い講演では,脚本上の要請で生じた,ある特殊な質感と対にして考えられていく物語の語り方に関する挑戦に関して,そこで求められるshadingを含む一連の開発,そこから生じた研究の題材などを交えて紹介します。
「Sphere eversion」とは,三次元空間内で球面を裏返すことです。ただし自己交差は許しますが,折り曲げたり尖らせたりすることはできません。S.スメールの1958年の結果によって球面が裏返せることが証明され,それ以来様々な視覚化が行われて,ウェブでも公開されています。最近,弘前大学の山本稔氏との共同研究により,「球面の輪郭線の動き」が非常に簡単な裏返しの手法を開発しました。自己交差の線の動きまでこめてこれを黒板上に描いて視覚化します。
3次元ユークリッド空間において,直線の運動によって生成される曲面「線織面」で,ガウス曲率が恒等的に零であるものを「可展面」という。可展面は,平面や円柱面,円錐面などの,「紙」を丸めたり繋ぎ合わせたりしてできる曲面の数学的モデルと考えられる。本講演では,このような「紙」で出来る曲面の中のうち,可展的なメビウスの帯の幾何やトポロジー,特異点に関連する話題を紹介する予定である。
3D-XplorMathはRichard Palais氏(UC Irvine)とHermann Karcher氏(Bonn 大学)が中心となって開発を行っている数学的可視化のフリーソフトウェアです。だれでも簡単にグラフィックスによって様々な数学的対象の具体的な様相を視覚的にとらえることができることを目的として開発されています。ここでは3D-XplorMathの概要,開発プロジェクト,教育・研究の現場での活用例について紹介します。3D-XplorMathはMathLibreというLinuxディストリビューションにも収録されています。MathLibreプロジェクトと収録されている他のソフトウェアの紹介もしたいと思います。
3次元ユークリッド空間R^3内の曲面であって面積汎関数の停留点となるものを極小曲面と呼びます。極小曲面は平均曲率が恒等的に0となる曲面として特徴付けられます。一方で,R^3内の曲面の共形不変量であるWillmore汎関数の停留点となる曲面をWillmore曲面と呼びます。この講演では平坦型エンドを持つ極小曲面を反転することによって,コンパクトなWillmore曲面を構成することができることを説明します。さらに,Weierstrass-Enneperの表現公式による極小曲面とWillmore曲面の可視化について解説します。
1950年代にFermi-Pasta-Ulamは非線形格子モデルのモードエネルギーの計算機実験を行いました。その結果は驚くべきもので,一度拡散したモードエネルギーが時間経過後に初期状態に近い状態に戻るという再帰現象が観測されました。これはFermi-Pasta-Ulamが実験を行った格子モデルが可積分系に近いということを示唆しています。後に戸田盛和氏により,今日,戸田格子と呼ばれる可積分な非線形格子モデルが発見されました。講演では,非線形格子の可積分性と非可積分性について3D-XplorMathを用いて説明します。
映像表現を支える技術を理論的な側面から見直す,数学的対象を扱う技術をその理論的側面と技術的側面の双方から見直す,または,映像と数学的対象を扱う技術を双方の関わりを議論するために見直す,これらの関係は非常に議論が複雑ですが,それ故そこに多くの情報が集まっている可能性があります。短い時間となりますが,数学者による映像表現に関する率直なコメントや,映像を扱う視点から見た数学的対象を扱う技術を用いた応用へのコメントなど,これら双方の深い関わりを一層目指していく議論を,発展性という視点から行いたいと思います。
6月29日は,KSS Projects for Communicationの一つである「Low Dimensional Topology and Computer Graphics」に関する提案型講演となります。より詳しくは,10月25-26日のワークショップで取り上げます。
英語版をご覧ください。
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